カテゴリ
以前の記事
2013年 11月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 タグ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
和歌山県の地方新聞に『紀伊民報』がある。その新聞「故郷への便り」というコラムに下記のようなエッセを掲載した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「あなたの専門は何ですか」と聞かれると、小生は「レオロジー」と答える。 すぐに、「レオロジーとはどんな学問ですか」という問いが返ってくる。 「ものの流れを扱う学問です」 「水が流れるのを研究するのですか」 「ごめんなさい、水と空気以外のものを取り扱うのです」 「例えばどんなものですか」 「我々の身体とか、食べ物、化粧品、プラスチックスなどです」 こんな会話をすることが多い。 小生が研究している学問分野は非常に狭い。そして、その狭い分野を的確に表現するのは困難を極める。 『レオロジー』は、高校の科目でいえば、物理と化学の一分野である。しかしながら、小生は「物理と化学を研究している」とはいえない。というのは、物理と化学の大半は、小生の専門ではないからだ。もっとはっきり言うと、小生の物理と化学の全般的な知識は高校性のレベルを越えない。ごくごく狭い分野のみが小生の得意なところであり、突出しているところであり、研究テーマなのである。 ところで、小生が非常なる興味を持ち、熱意を捧げて実験をし、寝ずに論文を書き上げたその翌朝、同じ結果の論文が別の人によって堂々と発表されているのを目にするということを、小生は過去に何度か経験している。新しい世界を他人に取られてしまった瞬間である。それまでの大変な努力が一瞬にして空しくなる瞬間である(研究者である限りは、誰しもこの種の経験を多かれ少なかれ経験していると思う)。 その結果を出した人が『世界に一人だけ』であることが研究者にとって大切なことであり、研究者が研究者たる所以でもある。 それなら、思い切って研究分野を狭くすれば、そのテーマは小生が世界でただ一人研究していることになる。そうすれば、小生のやった研究は直ちに、世界一になる。これが小生の戦法なのである。 ところで、『レオロジー』の分野を研究している人は、世界に約一万人いる。狭い分野ではあるが、とても一人というわけではない。 分野を狭く限定すると、『高分子のレオロジー』。これで、半分。さらに、『高分子溶融体のレオロジー』とすると、その三分の一。さらに、『高分子溶融体の伸長レオロジー』として、500人ぐらいになるだろう。 小生がこの高分子溶融体の伸長レオロジーの分野を始めた35年前は、世界でこの分野に関わる研究者は数人程度だった。 さらに、「伸長レオメーター」として、現在も使われている装置を研究していた研究者は、小生の他にもう一人だけだった。彼はドイツの企業人。ここまで分野を絞っても、世界に2人。 さすがに、これ以上絞るのは、無理であろう。 現在、小生が知っている『高分子溶融体の伸長レオロジー』の研究者は100人以上いる。その人達は、世界中にぱらぱらと生息している。思うにみな、狭い分野にこだわって、「我こそは、この分野では世界唯一の研究者」のはずが、見回してみたら、世界には、同じような事を考える人がいたということなのだろう。 おかげでよいことがある。世界の国々に少しずつ友人がいるのである。世界のどの国に行っても、友人がいて、最寄りの飛行場まで迎えに来てくれたりする。 はにかみやだったり、議論好きだったり、溢れるほどの厚意を示してくれたりする。小生も含め、少々偏屈な、狭い分野にこだわる研究者が、小生は好きである。
by yuyz
| 2009-12-11 06:49
| 私事
|
ファン申請 |
||