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H君は非常に優秀な学生だった。研究の進捗状況も良く、修士一年のとき研究成果を学会で発表することになった。当日は見事な発表だった。「おめでとう、良かったよ」と言おうと彼を捜した。
居ない、どこにも居ない。他の学生達に聞いても、みな「知らない」と言う。狐につままれたようだ。研究室の学生に彼のアパートに行ってもらうと、引っ越した後だという。 困った。 彼の携帯に電話しても携帯は解約になっており、実家の電話は誰も出ない。どうしたのだろう。 困った。どうすれば良いのだろうと悶々とした。 しばらくして、父親と連絡がとれた。父親は「よく、分からない」という。 途方にくれて、ただ時間のみが過ぎていった。 突然、退学届けが送られて来た。 父親に連絡すると、今度は本人の携帯電話番号を教えてくれた。早速電話して、 「退学ではなく、休学の方が良いのではないか。」と必死になって話をした。「なぜ、突然いなくなったのか?」とは聞けなかった。彼は一切こちらの話を聞かず、ただ「退学します」。 携帯を切り、父親に電話して、「お子さんは退学したいと言っていますが、休学にしてしばらく様子をみた方が良いと思うのですが」と言った。父親は「子供の言うとおりにしてください」と言う。 仕方なく、退学届けに担当教員印を押して学生係りに持っていった。悲しい瞬間だった。 一年あまりして、ひょっこりH君が研究室に顔を出した。びっくりした。顔をみると、以前と変わらない。 「どうしたの」と聞くと。 「高分子関係の仕事をしたい」 「今まで、何をしていたの」 「建築関係の営業をしていた。以前から建物関係をやりたいと思っていたので、高分子をやめて、建築関係の会社に入ったのだが、長続きせず、いくつか会社を変えたが、いずれも続かなかった。……」とぽそぽそと話し始めた。 ずっと、胸に刺さっていたとげがとれていくような気持ちだった。なぜ退学する前に、きちんと話をしなかったのかと叫びたかったが、ぐっと、飲み込んだ。 その後、彼は三ヶ月ぐらい、研究室に通ってきた。話し合いを繰り返し高分子成形加工の会社を紹介すると、就職していった。 順調に続くようにと祈りながら、今でもときどき彼のことが気になる。
by yuyz
| 2007-03-07 22:30
| 研究室
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